FileMakerコラム

FileMaker vs kintone: 業務システム構築、あなたのビジネスに最適なのはどちら?

ビジネスのデジタル化が加速する現代において、業務効率化やデータ活用は企業の成長に不可欠です。そこで注目されているのが、カスタムアプリケーション開発プラットフォームである「FileMaker」と「kintone」です。どちらもプログラミングの専門知識がなくても業務システムを構築できるという共通点を持つため、比較検討される方が非常に多くいらっしゃいます。

しかし、両者にはそれぞれ異なる特徴と強みがあり、あなたのビジネスや目指すゴールによっては、どちらか一方が圧倒的に有利となるケースも少なくありません。

このコラムでは、FileMakerとkintoneの主要な違いを掘り下げ、特に「FileMakerを選択するメリット」に焦点を当てて、あなたのビジネスに最適な選択肢を見つける手助けをいたします。

FileMaker と kintone、それぞれの得意分野

まず、FileMakerとkintoneがどのようなツールであるか、簡単に整理しましょう。

  • kintone(キントーン): サイボウズ社が提供するクラウド型の業務改善プラットフォームです。手軽にアプリを作成し、チーム内の情報共有やコラボレーションを促進することに強みを持っています。豊富な連携サービスやプラグインが用意されており、比較的シンプルな業務のデジタル化や共有に素早く対応できます。
  • FileMaker(ファイルメーカー): Claris International Inc.(Appleの子会社)が提供するクロスプラットフォーム対応のリレーショナルデータベースソフトウェアです。複雑なデータ構造を持つ業務システムや、iPad・iPhoneでのモバイル利用に特化したアプリケーション、そしてWeb公開まで、非常に柔軟性の高いカスタムAppを構築できます。オンプレミスとクラウド(FileMaker Cloud)の両方で利用可能です。

一見すると似ていますが、深掘りするとその設計思想と得意とする領域に大きな違いがあることがわかります。ここからは、特にFileMakerが選ばれるべき理由に焦点を当てていきます。

FileMakerを選択する5つの大きなメリット

1. 圧倒的なカスタマイズ性と複雑な業務要件への対応力

kintoneもカスタムAppを作成できますが、その自由度には一定の制約があります。基本的な項目設定やビューの調整は容易ですが、企業の独自の複雑な業務フロー、特殊なデータ連携、高度なユーザーインターフェース(UI)の実現となると、kintoneではプラグインやJavaScriptによるカスタマイズが必須となり、それでも限界があるケースも少なくありません。

一方、FileMakerは、単なる「フォーム+データベース」という枠を超え、まさにゼロからアプリケーションを設計するような自由度を持っています。

  • リレーショナルデータベースの真価: FileMakerは強力なリレーショナルデータベースエンジンを内蔵しており、複数のテーブルを複雑に関連付け、データの重複をなくし、整合性の取れたデータ構造を柔軟に設計できます。これにより、顧客管理、在庫管理、プロジェクト管理など、多岐にわたるデータを連携させ、統合されたシステムを構築することが可能です。kintoneはアプリ間の連携は可能ですが、FileMakerほど密接なデータ関連付けや複雑な親子関係の表現は得意ではありません。
  • デザインとUIの自由度: 画面デザインの自由度はFileMakerの大きな強みです。ボタンの配置、文字のフォントや色、背景、レイアウトの調整など、まさに「Photoshopでデザインするような感覚」で、ユーザーにとって直感的で使いやすいUIを追求できます。これにより、従業員の操作ミスを減らし、習熟度を上げ、業務効率を最大化するカスタムAppを作り込むことができます。kintoneもデザインカスタマイズは可能ですが、FileMakerほどの自由度はありません。
  • スクリプトと計算式の柔軟性: FileMakerには強力なスクリプト(自動処理)機能と計算式機能があります。これにより、ボタン一つで複数の処理を実行したり、条件に応じて自動的にデータを更新したり、複雑な計算を行ったりと、業務プロセスを高度に自動化できます。これにより、手作業によるミスをなくし、作業時間を大幅に短縮することが可能です。

2. モバイルファースト設計とオフライン対応による真の機動性

現代ビジネスにおいて、モバイルデバイスからのアクセスは必須です。kintoneもモバイルアプリを提供していますが、FileMakerはモバイル利用において一歩抜きん出ています。

  • FileMaker Goによるネイティブアプリ体験: iPadやiPhoneで利用できる無料アプリ「FileMaker Go」は、FileMakerで作成したカスタムAppをネイティブアプリとして動作させます。これにより、Webベースのアプリでは得られない高速なレスポンスと、デバイスのカメラ、GPS、センサーなどの機能をフル活用した、リッチなユーザー体験を提供します。例えば、現場での写真撮影と自動アップロード、位置情報の取得、バーコード読み取りなどがスムーズに行えます。
  • オフラインでのデータ利用: FileMaker Goは、インターネット接続がない環境でもカスタムAppを利用し、データを入力・編集することができます。接続が回復した際に自動的にデータを同期する機能があるため、電波の届かない倉庫や、外出先での急な作業などでも、途切れることなく業務を継続できます。kintoneは基本的にオンラインでの利用が前提となるため、この点でFileMakerに大きなアドバンテージがあります。

3. 柔軟なデプロイメントオプション:オンプレミスとクラウドの選択

kintoneは基本的にクラウドサービスとして提供されており、オンプレミスでの利用はできません。これは手軽さの反面、データ管理の柔軟性や、インターネット回線への依存という制約を伴います。

FileMakerは、「FileMaker Cloud」というクラウドサービスと、「FileMaker Server」を自社のサーバーに導入する「オンプレミス」の両方を選択できます。この柔軟性が、特に機密性の高いデータを扱う企業や、安定稼働を最優先する業種において大きなメリットとなります。

  • データ主権とセキュリティの追求: 医療機関や金融機関など、極めて高いセキュリティとデータ管理の厳格性が求められる場合、オンプレミスを選択することで、データが自社の管理下に置かれ、外部環境への依存を最小限に抑えられます。インターネット回線に依存しない安定稼働や、自社のセキュリティポリシーに合わせた詳細な設定が可能になります。これにより、情報漏洩のリスクを極限まで低減し、コンプライアンス要件を厳格に満たすことが可能になります。
  • 災害時・緊急時の事業継続性(BCP): インターネット回線の障害や、クラウドサービスのトラブルが発生した場合でも、オンプレミス環境であれば、ローカルネットワーク内で業務を継続できます。FileMaker Serverの適切なバックアップ運用と組み合わせることで、災害時における業務停止のリスクを最小限に抑え、事業継続性を確保することができます。

4. 長期的な運用と将来の拡張性への対応

一度構築した業務システムは、企業の成長や変化に合わせて柔軟に拡張・修正できる必要があります。FileMakerは、その設計思想から、長期的な視点でのシステム運用と拡張に非常に適しています。

  • スケーラビリティ: ユーザー数の増加やデータ量の増大、機能追加など、将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できる設計になっています。必要な時にサーバーのリソースを増強したり、モジュールを追加したりすることで、システムのパフォーマンスと機能を維持・向上させることができます。
  • 既存システムとの連携のしやすさ: 多くの企業は、既に会計システム、CRM、基幹システムなど、様々な既存システムを運用しています。FileMakerは、ODBC/JDBC、REST API、XMLなど、多様な方法で外部システムと連携できるため、既存資産を活かしつつ、新たな業務システムをスムーズに統合することが可能です。

5. 開発と運用のエコシステム、豊富なサポート体制

FileMakerは長年の歴史を持つソフトウェアであり、その堅牢性と信頼性は世界中で評価されています。

  • 豊富な開発パートナーとノウハウ: 日本国内には、FileMakerの専門知識を持った開発会社やコンサルタントが多数存在します。これにより、自社での開発が難しい場合でも、安心して外部の専門家に依頼し、高品質なカスタムAppを構築できます。また、オンラインコミュニティも活発で、困ったときの情報収集や解決策を見つけやすい環境があります。
  • 安定した製品ロードマップ: Appleの子会社であるClaris International Inc.が開発・提供しているため、長期的な製品サポートと安定した機能強化が期待できます。安心してシステムを構築し、未来にわたって活用していくことができます。

結論:あなたのビジネスにとって「本当に価値あるシステム」とは?

kintoneは、手軽に情報共有やシンプルな業務をデジタル化するのに非常に優れたツールです。しかし、もしあなたのビジネスが以下のような要件を持っているなら、FileMakerこそが、その真価を発揮し、競争優位性を確立するための強力な武器となるでしょう。

  • 複雑な業務フローを完全にデジタル化し、自動化したい
  • 独自のノウハウや強みを反映した、オーダーメイドのシステムが欲しい
  • ユーザーインターフェースにこだわり、従業員の生産性を最大化したい
  • iPadやiPhoneを最大限に活用した、現場で使えるモバイルアプリが必要
  • 機密性の高いデータを自社で厳重に管理したい、または安定稼働を最優先したい
  • 既存のシステムと密接に連携し、ビジネス全体を最適化したい

「どこまで作り込めるか」「どれだけデータに深く関与できるか」「どこにシステムを置くか」といった点で、FileMakerはkintoneに比べて圧倒的な自由度と柔軟性を提供します。それは、単なる業務効率化に留まらず、あなたのビジネスモデルそのものを強化し、競合との差別化を図る「本当に価値あるシステム」を構築できる可能性を秘めているということです。

FileMakerの導入を検討される際には、ぜひ私たちの専門知識と経験を活かしてください。貴社の具体的な課題や目標をお伺いし、最適なFileMakerシステムの設計から開発、導入、そして運用まで、トータルでサポートさせていただきます。

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